薬用歯磨剤(医薬部外品)の薬用成分概要

薬用歯磨剤(医薬部外品)の薬用成分概要

歯磨剤の薬事法上の分類や基本組成については「歯磨剤の知識」でご紹介させていただきましたが、医薬部外品の歯磨剤の薬事申請には大きく分けて2パターンあるのをご存知ですか? 薬事法では、医薬部外品を製造販売するときは厚生労働大臣の承認が必要とされていますが、薬用歯みがき類などいくつかの医薬部外品では、承認権限が都道府県知事に委任されているものがあります。そのため、新しい歯磨剤を開発した際には、まず薬事申請を行い、認可をいただいてから皆様にお届けできるようになるわけですが、その内容により申請先や認可をいただくまでの期間等が異なってきます。

都道府県に申請する医薬部外品歯磨剤

平成6年に厚生省(現在:厚生労働省)から発出された「薬用歯みがき類製造(輸入)承認基準」に適合した医薬部外品歯磨剤の場合、製造販売者の所在地である都道府県(例えば、ライオンの場合、東京都)に薬事申請し、製造販売の承認を受けます。東京都の場合、審査に必要な標準期間は開庁日75日とされており、通常、3、4ヶ月ほどで認可されます。

薬用歯みがき類の承認基準に収載されているのは6つの効能・効果と58種の薬用成分。その中には複数の効能・効果をもった薬用成分も多くみられます。

薬用歯みがき類製造(輸入)承認基準に掲載されている効能・効果と主な薬用成分

効能・効果 該当成分 主な薬用成分(代表例) 配合濃度(%)
むし歯の発生及び進行の予防 13成分 フッ化ナトリウム モノフルオロリン酸ナトリウム 0.02~0.21 0.07~0.76
歯周炎(歯槽膿漏)の予防 20成分 ε―アミノカプロン酸 グリチルリチン酸 β―グリチルレチン酸 塩化ナトリウム 酢酸dl―α―トコフェロール 0.006~0.2 0.01~0.22 0.0063~0.2 5.0~ 0.05~1.0
歯肉炎の予防 35成分 イソプロピルメチルフェノール 塩化セチルピリジニウム トリクロサン アスコルビン酸 0.02~0.1 0.01~0.05 0.02 0.01~
歯石の沈着を防ぐ 7成分 ゼオライト 無水ピロリン酸ナトリウム リン酸三ナトリウム ポリリン酸ナトリウム 1.0~ 0.1~ 0.01~ 0.01~
口臭の防止 35成分 ラウロイルサルコシンナトリウム 銅クロロフィリンナトリウム ヒノキチオール 塩化リゾチーム 0.1~0.5 0.005~0.15 0.01~0.2 0.05~4.0
タバコのヤニ除去 15成分 ポリエチレングリコール ポリビニルピロリドン ポリリン酸ナトリウム 0.5~ 0.05~ 0.01~

国(厚生労働省)に申請する医薬部外品歯磨剤

承認基準に収載されていない有効成分を配合した場合など承認基準外の申請内容である場合は、国(厚生労働省)へ申請を行い、承認を受けます。国申請の場合は、審査に必要な標準期間は6ヶ月とされていますが、承認前例のない新規の申請内容の場合、審査に要する期間が長期になる場合があります。

1) 既に認可を受けた承認基準外の薬用成分を配合した歯磨剤

先に挙げた「薬用歯みがき類製造(輸入)承認基準」に収載されていない薬用成分で、各メーカーなどが個別に国に申請して認可を受けた薬用成分もあります。これらの成分を配合した歯磨剤の場合は国に申請し、通常、標準期間内で認可をいただけます。

ライオンが個別に国の承認を取得した薬用成分の例

薬用成分 効能
デキストラナーゼ 歯垢の沈着の予防および除去
トラネキサム酸 出血を防ぐ、歯肉炎の予防、歯槽膿漏の予防
オウバクエキス 歯肉炎の予防、歯槽膿漏の予防
乳酸アルミニウム 歯がしみるのを防ぐ

2) 新規の薬用成分を配合した歯磨剤

全く新しい薬用成分や、既存の薬用成分でも新しい効果・効能を謳う薬用成分を配合した歯磨剤の場合、有効性や安全性のデータ等をそろえるなど、既存の薬用成分に比べ非常に多くの検討ととても長い時間をかけて準備し、国に申請します。審査を経て申請内容が認められれば認可がおりる訳ですが、通常、標準期間よりも長い時間を要します。