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ライオン歯科材株式会社は、歯科医師、歯科衛生士の皆様ともに、口腔の健康を通して患者様の健康寿命の延伸とQOLの向上に貢献してまいります。

 
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DENT.File 歯科医療・介護情報ライブラリ

予防歯科の現場

予防歯科最前線 vol.7 2010年8月発行 Dent.Filevol.14より 香川県三豊氏仁尾町 浪越歯科医院 院長 浪越 建男先生

浪越建男先生 略歴

1978年
香川県丸亀高等学校卒業
1981年
岐阜市立岐阜薬科大学中退
1987年
長崎大学歯学部卒業
1991年
長崎大学大学院修了(歯学博士)、同大学歯科補綴学第2講座勤務
1994年
浪越歯科医院開業
2001年
長崎大学歯学部臨床助教授
2003年
長崎大学歯学部臨床教授
2004年
(社)日本補綴歯科学会専門医

高松駅からJRで約1時間、燧灘(ひうちなだ)に面した三豊市仁尾町は、温暖な瀬戸内海式気候に育まれる、みかんやびわの果樹農業が盛んな町。予讃線「詫間駅」から車で10分ほどの仁尾町は、日照時間の長さから1981年に世界初の太陽熱発電の実験「サンシャイン計画」が行われた町でもあります。
1994年6月に開業した浪越歯科医院は今年で16年目。20歳までにむし歯を徹底的に予防することが、生涯を通じての口腔健康につながるとして、小学校などでのフッ化物洗口や歯磨き指導、予防歯科を中心とした医院活動を展開しています。浪越建男院長と6人の歯科衛生士が展開している、地域に根差した予防歯科活動についてお話を伺いました。

1日に10数床の義歯を入れて考えた「なぜ?」

多くの患者さんは「真面目に歯科医院に通っていて歯磨きもしているのに、なぜ歯を失ってしまうのか」という疑問を持っていると思います。専門家である私たちが、その疑問に的確に答え予防の重要性を理解していただくことが、予防を基礎に据えた歯科医療の第一歩だと考えています。
私は開業まで、長崎大学歯学部歯科補綴学第2講座で藤井弘之教授の指導の下、主に歯科用金属アレルギーの研究、臨床に携わっていました。日本補綴歯科学会専門医でもあるので、得意分野は補綴治療ということになります。

浪越先生を囲むスタッフの皆さん

生まれ故郷である仁尾町で開業した当初の患者さんの多くは、保存や補綴処置だけを希望していました。開業の初年度には1日に10数床の義歯を装着したこともあります。大学病院の診療室での役割は補綴処置が中心だったので、そのこと自体に特に違和感もなく過ごしていましたが、ある時「どうしてこんなに義歯が多いのか」という疑問が浮かんできました。続いて「それはこの町だけなのか、あるいは日本全体がこのような状態なのか」という疑問も浮かびました。地域住民全体や日本国民全体の口腔内の状況を初めて意識した瞬間だったと思います。

画像/香川県仁尾町の歯科医療費

自分の診療所が地域歯科医療にどれくらいの影響を与えているか、医療費の面から知る機会は少ないと思います。当時行政から提供された仁尾町の歯科医療費の年度推移は、私の医院設立の影響をそのまま表したものでした。1993年ごろまでの仁尾町の一人当たり歯科医療費は県平均の約2万円を下回って、1万5千円前後でしたが、開業を機に、半年で香川県の平均金額に追い付いて、翌年には平均を上回っていました。自分たちの診療や活動が大きく反映することを知るとともに、専門家として何を優先すべきか、悩んだ時期でもあります。

画像/浪越歯科医院

私が学生のころ長崎大学には小林清吾先生(現日本大学松戸歯学部教授)がいて、「う蝕予防における世界のフッ化物利用状況や必要性」、「疑わしきは罰せず(削らず)」、「予防は上流に遡って考える」などと、学生である私たちに熱く語り、治療中心の講義の中では、特に異彩をはなっていました。開業して校医になり幼稚園や小学校の健診に出かけると、子供たちの口の中には相変わらずたくさんのむし歯がある。その現状を目の当たりにすると、自然と小林先生の言葉が浮かんできて、子供たちのむし歯予防を最優先することになりました。

日本でも実施が望まれるフロリデーション

浪越建男先生

20世紀の10大公衆衛生業績の中の一つは水道水中のフッ化物濃度を適正に調整する「フロリデーション」といわれています。アメリカでは1945年に始まり、すでに10大都市はすべて実施しています。そのために歯科医師会が中心となって、フッ化物に関する情報を数十年にわたって繰り返し発信しています。それはオーストラリアでも、ニュージーランドでも同じで、同様のことが世界の61カ国で行われています。
韓国では「口腔保健法」にフロリデーションを盛り込み、国を挙げてむし歯予防に取り組んでいます。2002年に発表された論文によると、韓国の65歳の平均むし歯本数が日本の20歳に相当することが報告されていて、このことを日本の歯科医療の専門家は再認識する必要があると思います。
日本では2000年11月に厚生労働省が、住民合意を前提に、0.8ppmを上限とする水道水へのフッ素添加を認めましたが、他国でみられるような積極的な推進とはほど遠いものがあります。しかしながら、NPO法人日F会議(日本むし歯予防フッ素推進会議)など、積極的に活動をつづけている団体などもあり、最近できた新潟県、北海道、長崎県、愛媛県などの「歯・口腔の健康づくり推進県条例」では、フッ化物に関する文言が含まれています。
医院や家庭でむし歯予防に取り組むことも大切ですが、フッ化物を使ったポピュレーションストラテジーは集団のリスクを大きく下げられる効果的な予防法です。現在、日本で実施されている唯一のポピュレーションストラテジーは学校等での集団的フッ化物洗口です。新潟県は積極的にこれに取り組み、9年連続日本一むし歯が少ない県となり、新潟県の高校生以下の子供の約70%は永久歯にむし歯がないといいます。これは戦後の保健政策でナンバーワンだと評する専門家もいます。

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